秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「どれだけ俺が沙月だけを想ってたかわかった?」
「あー、うん、その…ごめん」
「謝らなくていいよ。でも約束は守ってよ」
「あ、」
―キス
簡単に考えることを放棄した自分を責める気にもならなかった。
だっていくら時間を与えられてもあの答えだけは絶対にわからないから。
彼がまた乾いた唇をすっと撫でる。
「いいよ、うん、しよう…キス」
「そりゃね、だって答えられなかったし」
「…で、でも…軽いキスね」
「軽いって?」
「触れるだけの、」
「…うーん、」
悩むように首を傾げる彼を見て深いキスをするつもりだったのかと思って思わず顔が歪む。
ドキドキする、物凄くドキドキする。こんな感情を彼に抱くなんて数日前の自分じゃ考えられなかった。
クスっと彼が笑う。何がおかしいのだろう。私なんて今はもう本当に口から心臓が飛び出しそうだというのに。
「嫌だ」
「…」
「だって、沙月はファーストキス、俺じゃないから」
「それは…だって、」
私のファーストキスは高校生の頃だった。彼にそれを話した覚えはないが、この感じだと知っているのだと思う。
心臓の音が彼に届いていませんように、動揺が伝わっていませんように。
私は、近づいてくる彼の顔にギュッと反射的に目を閉じた。
「…っ…ん、」
触れる唇に、ほんの少し体が震えた。
拓海とキスをしている。ぐっと拓海のシャツを握った。
宣言通り触れるだけのキスで終わらずにきつく閉じた唇に割って入る舌に強制的に吐息が漏れる。