秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
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昔関係のあった女性と会うという一歩間違えれば修羅場と化しそうな状態なのに、沙也さんがちゃんとわかってくれたおかげで何もなく帰宅した。

拓海のあの冷酷な表情や声を思い出すと、本当に彼なのかと疑いたくなるほど私の知っている彼とは違った。

「ねぇ、聞いてもいい?」
「ん?」

ソファでくつろぐ彼の横にちょこんと座る。
シャワーを浴びた後だからお互い同じ香りがする。それがくすぐったいのに、居心地がいい。

「なんかコソコソたまにパソコンで何してるの?」
「あ、なんか疑ってるでしょ?浮気してるとか」

まさか、と言って否定する。それはない、ただ何をしているのか気になるだけだ。私が近づくとすぐにパソコン画面を閉じるから気になるのだ。

「気になるなら見せようか?」
「…いや、いいよ。プライバシーの侵害になるし」
「誤解される方が嫌だよ」
「誤解してないってば!ちょっと気になっただけ」

ムキになる私を見てクスクスと笑い、急に耳に顔を近づけてくる。
反射的に体を反らせるが既に彼の手が私の背中に回っていて逃げることなどできない。


「沙月の写真、見てただけだよ」
「へ…」

鼓膜を揺らすのは、彼の甘い声。


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