秘密に恋して~国民的スターから求愛されています~
「マサトは同じ事務所だけどそんなに仲は良くない。年齢も同じだし、売れた時期も一緒だから勝手にライバルみたいに思っている人も多いけど全然そんなんじゃないよ」
軽く笑ってそういう彼に私はそうなんだと頷く。
そこまで親しくないのに、同じマンションか…まぁ、たまたまなのだろう。
あまり深く考えるのはやめた。
「もう引っ越しの準備は終わったの?結構片付いてる感じだけど」
拓海がベッドから腰を上げて、立ち上がる。
私も同様にして立ち上がった。
「うん、だいたい終わってる。あとは掃除とかかな」
「そっか。ありがとう、仕事で大変なのに。本当は俺も手伝わないといけないのに」
そう言って眉を下げる彼に私は首を振る。そんなことはない。
忙しいのに、私のために駆けつけてくれた彼が愛おしい。
そうだ、そう言って思い出したようにポケットから鍵を取り出して私に差し出す。それはうちの合鍵だった。
「これも返しておかないとね。引っ越すときに返却するでしょ?」
「そうだった。ありがとう」
そういってそれを貰う。付き合う前から私は彼の合鍵を持っていたし、彼も同様にそうだった。
それなりに長くこのマンションで過ごしていたから感慨深いものを感じて目を細める。
もう少しで、拓海と同じマンションに住めるんだ。
てのひらの上の鍵を見つめて幸せを嚙み締めた。