恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
あれ…あれは、夢だったのだろうか。

冷えピタを私の額に貼りなおすと、サイドテーブルに置いてある湯気の立ったお粥が目に留まる。
私は千秋さんに「これ、千秋さんが?」と質問した。すると「もちろんだよ」と言って笑みを浮かべる。

…お粥を作ってもらったことなどない私は感動した。
中を覗くと卵粥だった。頭痛もするし、関節も痛いし、体も重いけど嬉しい。
元気が出る気がする。なんだろう、胸の奥がじんわり温かくなる。こんな経験はない。

「とりあえず、ちゃんと食べて」
「はい」

にっこり笑うと、千秋さんも笑ってくれた。

なんだ、やっぱり夢だったんだ。

ほっと胸を撫でおろして

「今日はずっと家に?」

と千秋さんに聞いた。

「うん、あ。でも雪乃が急に家にきてびっくりしたよ」
「え、」
「一時間くらいで帰ってもらったけど」

その言葉に私は息をのんだ。

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