恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】

まさか、あれは…私が見た光景は本当だったの？現実にあったの？

一気にどん底に突き落とされたような絶望感が襲う。
私は、目線を落としてギュッと布団を握った。

そして、何故泣いているのかわからないけど涙が頬を伝って手の甲にポトポト落ちていく。
それを見た千秋さんが慌てて私の顔を両手で包み込んで私の顔をグイっと持ち上げる。
強制的に絡む視線にさらに涙が頬を伝って落ちる。

「どうしたの？！何かあったの？」
「…ぅ、…ないです、ないので離してください」
「いや、無理だよ。なんで…―」

苦しそうに顔を歪める千秋さんが離れていきそうな気がした。

あぁ、でも。

私たちは最初から”夫婦”ではない。
戸籍上、夫婦というだけで、”夫婦”ではない。

もともと、一緒じゃないのに離れるなんて心配をすることがおかしいのかもしれない。
じゃあ、何故こんなにも胸が痛いの？苦しいの？ねぇ、なんで。