恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
数秒のことなのに、千秋さんの答えを聞くのが怖くて私はギュッと目を閉じた。
…したって言われたらどうしよう。
詮索しないっていう約束なのに…知りたいという欲が溢れてどうしようもない。

「してないよ?するわけないじゃん」
「え?!」
「なんで急にそんなこと、」

そこまで話して千秋さんが、あっ…と小さな声を出して私の瞳を覗くようにして見つめる。

―していない

その言葉で一気に体から力が抜けて目尻に涙が浮かぶ。
よかった…何もなかったんだ。
千秋さんと雪乃さんの二人の間に何があったのかわからないけれど、千秋さんがしていないというのなら本当だと思う。
というか信じたい。

「もしかして…桜子、」
「へ?」
「見たの?あの場面」

千秋さんが言葉を紡ぐと同時に顔を歪めた。
あの場面というのは雪乃さんが千秋さんに覆いかぶさっていたあの場面のことだろう。
私はこくりと頷く。
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