恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】

「ふ、触れるだけのキスです」

早口で千秋さんにぶつける。しばらく私の頬を撫でたり首筋に指を這わせたり…いったい何の時間なのかと思いながらも私はじっとしていた。
それが禊になるわけでもないが、夏希君とのデートを黙っていたことへの反省として私は黙る。

「桜子は悪くないよ」
「いえ、嘘ついたので…友達だって」
「でもそもそも詮索しないって決めたの俺だから」
「…」
「あれ、後悔してるんだ」
「後悔?」
「うん、そう。後悔してる。桜子のことなんでも知りたいから。今日だって夏希とどういう話をしてどこにいったのか、キスはどんなキスをしたのか、全部知りたい」
「…」

千秋さんは海のように広い心の持ち主なのだと再確認した。
大きくて広い、いつ飛び込んでも私を全力で受け止めてくれるようなそんな存在だ。

「千秋さん、本当にごめんなさい。キスのことも黙っててごめんなさい」
「いいよ、俺こそすでに契約違反してるし」
「…」
「でも夏希が言ったように無防備なのは確かだよ」
「あ、それは…」

そう言って千秋さんが私の顎を掬った。
そして甘美な声で囁くように言った。

「ほら、すぐにキスされそうになってる」



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