恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「君の借金はすべて俺が払うよ」
「っ」
「ね?いい条件でしょ?その代わり君は俺の妻になる」
「で、でも…なんで私なのですか?妻って…その、愛し合って結婚するものでは?」
「ふふ」

焦る私に(だってこんな私にだけ都合のいい条件など絶対にない)彼は笑った。余裕そうに、全てわかっているように。

「君、俺のこと好き?」
「…えっと…」

首を少しかしげて私に問う。
本心をぶつけるべきだろうか。好きでも嫌いでもないけど、なんだか読めなくて苦手だと。

「君、俺のこと好きじゃないよね。むしろ苦手だ」
「…そ、そんなことは!」
「最初に会った時からそうだった。だから気に入ったんだ。あとは、あのお店での出来事、あれは笑ってしまったよ。客にあんなことする人見たことがない」
「…」

は、恥ずかしい。穴があったら入りたいとはこのことだ。
朝宮さんは楽しそうに笑っていた。そんなに面白いことだろうか?
でも朝宮さんの今の笑いは本物だと思った。

「でも、何故それで?」
「簡単だよ。実は会社を経営しているんだ。規模も大きくなってきて海外の会社も買収して…今後も巨大な会社にするつもり。ただそうなると戸籍上の奥さんが必要なんだよ。わかる?」

私は首を振った。
そんな世界は知らない。

「ほらパーティーに呼ばれることも増えてきてね。色々挨拶して回る際にはそういう存在が必要なんだよ」
「…はぁ、」
「で、俺はね特定の一人だけを愛するなんてしたくないんだよね」
「?!」
「面倒なだけでしょ?そういうの」
「…へ、へぇ」
「だから俺のこと好きじゃない子がいいなって思って。あと家政婦とか雇ってもストーカーみたいになっちゃう人が多くて困ってるんだよ」
「…」
「で、結婚したら家のこともお願いしたい」
「…」
「どうかな?」




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