恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
千秋さんは全然倉田さんを信用していない。…もうアルバイトやめることになるのだろうか。

それは避けたかったのに、全部が裏目にでている気がするのは気のせいではないはず。
おいしいコーヒーに、ゆったりとしたお洒落な音楽に、イケメンの店長…そりゃ人気になるだろう。

と、思っていると、

「これ、サービスです。パンはすべて僕の手作りなのできっと喜んでもらえると思いますよ」
「いいんですか!」

倉田さんが私たちのテーブルに丸いてのひらサイズのパンを2つ、置く。

「ブルーベリーとチーズが入っています。明日からもよろしくね、桜子ちゃん」
「ありがとうございます」
「わざわざありがとうございます。倉田さん」

千秋さんは倉田さんの前になるとやはりぴりついた雰囲気を出すけど、倉田さんは全く気にしていないようだ。

去り際、倉田さんが思い出したように口を開いた。
目線は千秋さんに向けたまま、

「桜子ちゃん、うちの店の看板娘になりそうですよ!」
「そう、なんですか?」
「初日から評判いいし、顔で採用してよかったなぁ」
「…顔?」

千秋さんのこめかみがぴくり、動いた。
私は咄嗟に立ち上がって、倉田さんの腕を掴んだ。
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