恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
なんというか、倉田さんは憎めない…人たらしな人だ。
きっと友達も多いだろう。チャラついてるのに、大人の余裕もあって…それでいて話も上手だ。
接客業も向いているのだと思う。

「桜子ちゃんは、なんで今の旦那さんと結婚したの?」
「なんで…って…そりゃ好きだからですよ」

契約結婚ですとは言えないから当たり障りのない返答をするけど、倉田さんが首を傾げてスピード婚の決め手は?とどんどん核心をつく質問をぶつける。
ぼろを出さないように頭をフル回転させ、この話題から遠ざけようと思った。

「私の夫はモテるんですよ。なので、すぐにでも捕まえてやろと」
「へぇ、そうなんだ。桜子ちゃんがそこまで野心家には見えないからさぁ。お金のために今の旦那さんに近づこうとするような子には見えないし。もしお金のためならこんなところでバイトしないでしょう?」
「…お金ではないです。顔です」
「ほぅ。顔ね?それは確かに頷ける。イケメンだもんね。でもなぁそれでもしっくりこないよ」
「…人は見かけによらないっていうじゃないですか」
「ま、そうだね」

一瞬、目の奥が光ったような気がした。気のせいだろうけど。

「じゃあ、毎日愛してるとか好きとか言い合っちゃうんだ?いいねぇ。新婚は」
「…はい!もち…ろん、…ん?」
「どうかした?」

カウンターで私に休憩用にコーヒーを入れてくれて、それをコトンとテーブルに置いた。コーヒーがカップから白い湯気を出している。
でも、私はコーヒーを入れてくれたお礼よりも今の言葉に引っかかってしまって放心状態で立ち尽くす。

大丈夫?と声を掛けられてもうんと頷くことしかできない。
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