恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「…あれ、私…」

倉田さんの冗談の言葉でまさかこんなにも悩むことになるとは…この時は思っていなかった。

『好きになって』
『好きになってくれたら嬉しい』

そんな言葉を何度も言われた。ようやく私は彼に好意が芽生えてそれを伝えた。
あれ?ちょっと待って。いや、え?

あまりにも混乱してしまい、額に自分の手のひらを当て虚な目を床へ落とす。
倉田さんが私の肩に手を置き、フラフラと私を揺らしてようやくはっと顔を上げる。

「どうしたの、顔色悪いけど…もしかして具合悪い?タクシー呼ぶから、もう帰っていいよ!」
「…いえ、まだ勤務時間ですから」
「何言ってんの!だって顔真っ青だよ。ほら、早く」

そう言って倉田さんがタクシーを呼んでくれて、私は強引にそれに乗せられる。すみません、と頭を下げて自宅へ向かうタクシーの中、私はずっと考えていた。




―好きと言われたことがない







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