恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
千秋さんに気づかれないように私は寝返りを打つ。
彼に背を向けて、目を閉じる。
千秋さんが私の腹部に手を滑らせてそのままギュッと背後から抱きしめるように密着する。

浮気疑惑があるのに、ドキドキしてしまう。

白川瑠璃子?そんな人は知らない。
千秋さんに愛のメールを送っているのはだれなんだよ!と心の中で叫びつつ私は眠りについた。


翌朝、普段と変わらない様子で千秋さんが朝食を食べている様子を窺いながら昨日のことを考えていた。

彼に不審な様子はない。それとも隠すことがうまいだけなのか。

「昨日は随分早く寝ちゃったんだね?」
「…眠たくて」
「寂しかったなぁ」

そう言ってコーヒーカップへ手を伸ばす彼に苦笑いをする。
これも演技?それとも本心?

好きと言ってもらえていないことに加えて、彼の携帯電話に表示されていた愛のメール…私は千秋さんにとって本当にただの”お飾り”の妻だったりするのかな。
契約結婚だから彼自身に”浮気”をしているという自覚がない可能性がある。

千秋さんが朝の身支度を終えて、玄関ホールへ向かう。
送り出すために私も彼の後ろをついていく。

高級そうな革靴を履いて、私に振り返ると行ってきます、とやさしい笑顔を向ける。私は、いってらっしゃいといつものように返す。


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