恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「まー、いろいろ大変だと思うよ」
「何が?」
「何がって。うちの親と俺たち兄弟はそもそも仲が悪い。兄貴から聞いてるだろ」

私は、そうだっけ?と曖昧に頷いた。
確かに、彼はあまり両親の話をしたがらない。夏希君が昔私に話していた内容を思い出しても厳しいご両親なのは理解できる。

「うちの親、この辺じゃ結構有名だよ」
「え?!そうなの?!」

千秋さんを見ているとなんとなくわかる。
育ちの良さというのは、繕っても分かる人にはわかってしまう。
恐らく、私が彼のご両親へ挨拶に行ったらきっと品がないと言われてしまうだろう。それは想定内だ。

「朝宮って調べてみなよ。ここらの大学病院全部うちが経営してる」
「へ?!」
「兄貴から聞いてないんだ。だからうちの親は俺たちを医者にする予定だったんだよ。なのに工学部に進学して、そのまま会社を立ち上げて…親からしたら許せないだろうね。せっかく敷いたレールの上から脱線するなんて。あ、
ちなみに母親はジュエリー会社の社長だよ。聞いたことない?ルフレジュエリーって」

それを聞いた瞬間、絶句して固まる。
知らないわけなどない。ルフレジュエリーは、全国に展開しているジュエリー会社だ。
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