恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
そして、彼のお父さんもまた、病院を経営する一般人とはかけ離れた人物だ。
眩暈が襲ってくるのを必死に抑えた。

細かい情報は千秋さんから伝えられていない。
どうして教えてくれなかったのだろう。知ったところで、私は絶対に朝宮家に釣り合うような女性ではないのは変わらないのだから言ってくれてもいいのに。

「へぇ～朝宮ってあの？！桜子ちゃん！とんだ玉の輿じゃないか～！やるね～男を見る目がある」

一人テンションのおかしい倉田さんがバシバシ私の背中を叩くけれど、私は無視して夏希君と会話を続ける。

「桜子なら乗り切れると思うけど相当うるさいよ。うちの親」
「…絶対認めてくれないよね？」
「まぁ、絶対認めないだろうな。俺だって未だに認めてもらってない。兄貴も同様かな」

残り少ないコーヒーを啜り、ご馳走様でした、と言って立ち上がる夏希君がお金を置いて帰っていった。

”俺だって認めてもらってない”

その言葉が少しだけ寂しそうに聞こえたのは、気のせいだろうか。

「ほら桜子ちゃん、これみてみなよ」
「なんですか、さっきからテンション一人だけ違いますけど」
「いいからいいから」

そう言って彼が見せてきたのは、とある雑誌だった。
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