恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「初めまして。ご挨拶が遅くなって申し訳ございません。桜子と申します」

すぐにご両親に挨拶をする。
深く頭を下げて、緊張が伝わらないように丁寧に言った。

「はじめまして。どうぞ、お掛けになって」

千秋さんのお母さんはそう言って私たちに座るように促す。
ペコペコと頭を下げながら、私は千秋さんに続くようにしてソファに座った。
緊張がピークに達していた。
とにかくいつものように言いたいことを何も考えずに言ってしまうのは絶対によくないから何か言いたくてもぐっと我慢しよう、そう思った。

家政婦さんがすぐに飲み物を出す。
お礼を言うとにっこり微笑んでリビングを出る。
その笑顔にほんの少し癒されて私は正面から千秋さんの両親を見つめた。

お義父さんは新聞を読んでいたようでそれを折り畳み、ソファに置く。

ソファのすぐ近くには、サイドテーブルのようなものがあって、その上にいくつか雑誌が置かれている。
見たことのある雑誌もあってそういうのも読むのか、と意外に感じた。

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