恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「桜子さんね、びっくりしたわ。いきなり結婚するだなんていうものだから」
「うん。桜子は真っ直ぐでとても強い女性だよ。俺にはないものをたくさん持っている」
「そう。まぁ、それは千秋の主観でしかないからどうだっていいのだけど」

ぴりつく空気感に笑顔を作っているのがやっとだった。
千秋さんとお義母さんは普通の会話をしているようで、所々皮肉を含んでいるからヒヤヒヤする。

「桜子さんのことは調べさせてもらった」
「は、はい…」

無口なお義父さんが私に目を向ける。

それは想定内だった。
夏希君と私が小学生のころ一緒に遊んでいた時だって、私のことはすぐに調べていたのだろう。だから私と夏希君を離した。

つまり、今だって私のことを隅々まで調べていることは想定内だ。

契約結婚だということはばれていないといいけれど…。

「小さいころ夏希とよく遊んでいたお嬢さんだとは思わなかったよ。夏希の次は兄の千秋とは。したたかな女性だということはわかった。そんなに金持ちが好きかね?これだから育ちの悪い人は信用できないんだ。だから雪乃さんと結婚すればよかったのに」
「…」

まるで私が財産目当てで近づいているかのような言い方に一気に頭に血が上るが深呼吸をした。
ここで我慢が出来なければ…絶対に認めてもらえない。

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