恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「本当に千秋さんの意思をつぶしたいならば、経済的援助はしなかったはず。それは親としての愛情が少しはあったからできたことでは?そして、千秋さんを初めて見たときから今も思っているのですが、本当に所作が美しいのです。箸の持ち方も、歩き方も、食べ方だって。すべてに品がある。育ちの良さを感じました」
高級クラブで一日だけ働いた際に彼と出会った。
今でも覚えている。品の良さ、育ちの良さを隠しきれていない彼は私とは住む世界が違うと思った。
「そういうのって、頑張ってもどうにもならないというか…小さなころから身に着けていないとここまでのオーラは出ないんです。箸の持ち方すら教えて貰えていなかった私は成人してからですよ、ちゃんと持てるようになったの」
「…さく、らこ」
千秋さんの表情が切なく、苦しそうに変化する。
「羨ましいです。愛されて育っている千秋さんが…とても。私にはそれがなくて、なのに今でもそれを欲している自分がいる。嫌いで見たくもなくて関わりたくない母のことを…そんなどうしようもない母親なのに、誰よりもお母さんの愛情を切望しているんです」
涙が溢れてきた。
泣く予定などなかったのに。
黙ったままの千秋さんからご両親へ目を向けた。
先ほどまでの怒りに満ちた瞳は今はもうなくて、それよりも驚きのほうが勝っているようだった。
高級クラブで一日だけ働いた際に彼と出会った。
今でも覚えている。品の良さ、育ちの良さを隠しきれていない彼は私とは住む世界が違うと思った。
「そういうのって、頑張ってもどうにもならないというか…小さなころから身に着けていないとここまでのオーラは出ないんです。箸の持ち方すら教えて貰えていなかった私は成人してからですよ、ちゃんと持てるようになったの」
「…さく、らこ」
千秋さんの表情が切なく、苦しそうに変化する。
「羨ましいです。愛されて育っている千秋さんが…とても。私にはそれがなくて、なのに今でもそれを欲している自分がいる。嫌いで見たくもなくて関わりたくない母のことを…そんなどうしようもない母親なのに、誰よりもお母さんの愛情を切望しているんです」
涙が溢れてきた。
泣く予定などなかったのに。
黙ったままの千秋さんからご両親へ目を向けた。
先ほどまでの怒りに満ちた瞳は今はもうなくて、それよりも驚きのほうが勝っているようだった。