恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】

「お義母さんもお義父さんも、ちゃんと言わないと伝わりませんよ」
「何を…」
「その雑誌、なんですか？」

私は涙を拭いながらお義父さんの座るソファ横のサイドテーブルに置かれた雑誌を手にした。

慌てた様子のお義父さんを無視して、丁寧にあるページで目印代わりにおられたそこを開く。

「これ！千秋さんの記事じゃないですか！」
「それは…違う、」
「じゃあ、何故この雑誌を？他のページに何が書いてあるか言ってみてくださいよ。どうせ、千秋さん目当てで購入したから他のページなんか見てないくせに」

手にした雑誌は、あの倉田さんが購入したといっていた雑誌と同じだった。
千秋さんのお父さんがこのような雑誌を購入することに違和感があって、本当は息子の活躍を嬉しく思っているのではないか。でも、意地を張ってそれを伝えられていないのではないか、そう推測した。

「そうなの…父さん？」
「いや、だから」
「いいですか！エスパーじゃないんだから思ったことは言わないと伝わりません。親と子は、皆うまくいくわけじゃない。でも、ちゃんと本音で話しもしないで勝手に決めつけるのはやめてください、あと…―」

きっとお義父さんだってお義母さんだって医者の道へ進んだ方が幸せになれると思っていたのだろう。
自分たちがそれで成功しているからこそ、息子にも同じように成功してほしい。これもまた、親の気持ちを考えると理解できる。
ただ…―。

「子供は人形ではありません。同じように育てても性格も違うだろうし、夏希君と千秋さんも全然似ていない。親の敷いたレールの上を歩かなかったとしても、いいじゃないですか。自分の意志でしっかり将来を考えて実行した。親の望む通りの選択をしたとしても、それを選ばなかったとしても、否定したり認めないのは違う。千秋さんと夏希君の人生は親のものじゃない。彼ら自身のものです」

真一文字に結んだ唇が、悔しそうに歪み、でも何も言い返しては来なかった。

この家族は、まだやり直せる。きっとそう。
私のようにならないでほしい。


世の中には分かり合えない家族もいる、分かり合わなくていい家族もいる。
私のように、切らないといけない関係の家族もあるでしょう。
でも、千秋さんの家族は違う。