恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「初対面なのに失礼なことを言ってすみません」

深く頭を下げた。
堪えきれなくてまた涙が頬を伝っていく。
顔を上げると千秋さんのご両親と目が合った。私を力強く見つめている。

すぐに認めてもらおうとは思っていない。
ただ、千秋さんと結婚したからこそ、彼にとってもご両親にとっても最善の方法を選びたかった。

今の私の言動が正しいのかはわからないけれど。

「そうだね。初対面の人にここまで言われたのは初めてだ。そして、説教も久しぶりだよ」
「ええ、本当ね。こんな若い子に」
「…あ、すみません…つい」

さすがに言い過ぎたような気はしていた。
もう少し穏やかに言えたらよかったのに、猪突猛進状態になってしまった。

手の甲で涙を拭うと、すっと目の前に白い上質なハンカチを差し出される。
え、と小さな声を出し、目線を上げるとお義母さんと目が合う。
差し出しているのはお義母さんだった。戸惑いながらもそれを受け取ると、

「ハンカチくらい持っていないのかしら？必需品でしょう」
「すみません…鞄に入れるのを忘れていて」

盛大にため息を溢し、呆れたように私を見る。

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