恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「あのさぁ、何度も言ってるけど俺がいない時は絶対に来るなって。桜子が困るだろ」
「だからあなたがいる時間帯にわざわざ足を運んでいるんでしょう?」
「昨日来ただろ」
「来たってちょっと寄っただけじゃない」
「まぁまぁ。二人とも仲良く仲良く」
「ちょっと桜子さん?そんなこと言ってないでほら、勉強しなさい」
「あ、はい…」


あれ以来、千秋さんのご両親特にお義母さんの方がうちに頻繁に訪ねてくるようになった。

お義母さんはジュエリー会社の社長で一人でここまで会社を大きくしたやり手だ。そんなお義母さんは男勝りで少し話しただけでもわかるその闘争心に感服する。
今日は休日で、お義母さんに英語を勉強するようにと言って渡された教材のチェックをされている。

これだけじゃない、茶道や料理教室にも通っている。(正確に言うと通わされている…)

あれだけの会社の社長をやりながら、あらゆる方面の知識があるお義母さんはただただすごいとしか言いようがない。

「英語は…その、苦手でして。TOEICなら600くらいはあるんですけど」
「600?!そんなの話にならないわ。あなた、千秋の会社が今後世界に向けて成長しているというのにその妻が英語の一つも話せないなんて」

そう言ってあからさまにため息を溢す。
千秋さんは私を心配してそんなことはしなくていいよ、というのだけど朝宮家に嫁いだ身としてはここは全力でいきたい。

「母さんとは違うんだから。桜子には家のことやってもらえたら満足だよ」
「何言ってるの?!彼女は私のようになれると思っているから教えているの」
「…え、」

誇らしそうに「素質があるわ」と言ったお義母さんに思わず笑ってしまいそうになった。

なんだ、ただの良い人じゃない。


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