恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
それは、彼女が言った通り以前夏希君にキスをされた写真だ。
どうしてそれがあるのかわからないけど、数枚取り出した写真はどれも私と夏希君のキスをしているところだった。
まさか、これで千秋さんと別れろと脅しているのか、そう思った。
しかし、すでに千秋さんはこの事実を知っている。あのデートの件はもう和解した。
「えっと、これは…その、誤解です。千秋さんも知ってますし」
「ええ、そのようですね」
「え?知ってるんですか。じゃあ何故…―」
雪乃さんが写真を一枚手に取って眺めるようにそれを見る。
首をゆらゆら揺らしながら見とれるようにそれを見る彼女に腕が粟立つ。彼女が何を考えているのか全くわからないからだ。
「ええ、知ってますよ。だからびっくりしたの。だって夏希君は千秋さんの弟よ。それなのに桜子さんに好意があるなんて…おかしな関係じゃない?それにデートなんかしちゃって…」
「それ、は」
「何か事情のある婚姻関係なんじゃいかしら」
「っ」
「うふふ、そうよねぇ。まさか契約結婚だなんて周りには言えないわよね。特に千秋さんのご両親には」
衝撃が走り、喉の奥から必死に声を出そうとするのに、出てこない。
それが余計に彼女の発言を肯定することになる。