恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
訳アリ結婚
私たちの場合は契約結婚だ。しかし契約する際、”他言禁止”としっかり記載されていた契約書を思い出す。
葉月にだけは最初に話してしまっているが、倉田さんには話すわけにはいかない。約束を破ることになる。

「…ごめんなさい。えっと…言えないので」
「そうなんだ？まぁ全然いいよ。桜子ちゃんが元気なのが一番だからね！何かあったら相談してよ」
「ありがとうございます」

そう言って珍しくいいことを言ってくれる倉田さんに笑ってしまう。
私は人に恵まれている。
小さな頃、母親からの愛情を得られなかったのに不良になることもなかったのは人に恵まれていたからだと思う。
葉月や夏希君、学校の保健室の先生や、近所のおばあちゃん…たくさんの人が私を気にかけてくれて傍にいてくれた。
今もそうだ。
倉田さんもいい人で千秋さんも同様だ。素敵な人たちがたくさんいる。
「そうだ。また旦那さん連れてきなよ。美味しいコーヒー御馳走するよ」
「はい」

元気よく返事をした。
千秋さんと離れたくはない。でも、ご両親と絶縁もしてほしくない。
どちらも失いたくない場合、どうしたらいいのだろう。
今日は早めにバイトを上がらせてもらって、家で悶々と何か策はないか考えていた。


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