恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
千秋さんの発言に戸惑った表情を向ける。
どういう意味だろう。契約結婚自体をやめるということだろうか。
だとしたら…私たちの関係が終わってしまう、ということ?
「ちょっと待ってて」
そう言い残して寝室へむかう彼はすぐに戻ってきて私に契約書を見せると勢いよくそれを真っ二つに破く。
あんぐりと口を開けて静止する私に千秋さんは優しく言った。
「いらないよねこれ。始まりは契約結婚だったけどもう俺たちは普通に愛し合ってる夫婦だよ」
「え…つまり、本当の夫婦に…?」
「うん。それからここでするつもりじゃなかったんだけど」
そう言って千秋さんがこっち、というので彼に従うようにソファの上に腰かけて、まだスーツ姿の彼がそっとあるものを取り出す。
それは、小さな紺青の箱で首を傾げて見ていると千秋さんがクスクスと笑いだす。
「君を一目見たときから惹かれていた。今もそうだよ。桜子が俺の奥さんになってくれて本当に嬉しい。これからも一緒にいてくれないかな」
「あ、それはもちろん…」
そっとその小さな箱を開けるとそこには見たこともない大きなダイヤが輝く指輪があった。
想定外のそれに驚き、何度も瞬きをする私を見て柔らかい瞳を向ける。
「俺とこれからもずっと一緒にいてほしい。君じゃないとダメなんだ」
静かに、でも確かにそう言われて私は溢れ出す感情を隠すこともできずに大きく頷き千秋さんに抱き着いた。