恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
しかも彼はイケメンなだけじゃないようで、会社の社長だということもわかった。お金に執着しない彼女みたいな女性が案外こういう”いい物件”を手に入れてしまうのかもしれない。

「千秋さん！！」
「久しぶりに来たよ。忙しい？」
「いえ、そんなことはないですが…」

困惑する桜子ちゃんの背後からひょっこり顔を出すと桜子ちゃんの旦那さんはあからさまに嫌な顔を向ける。
どういうわけか僕はあまり好かれていないようだ。

「どうも。妻がいつもお世話になっております」
「いえいえ！こちらこそ！本当に彼女には助かってますよ～この間もね」
「倉田さん！！」

桜子ちゃんが僕を睨んでこれ以上言うな、とでもいうような顔をする。

何か言ってはいけないことでもあるのだろうか。
桜子ちゃんはあたふたしながらも旦那さんを奥の席へ案内する。

そしてすぐにカウンターまで来ると

「千秋さんに変なこと言わないでくださいね！」

と、強く言ってくるが変なこととは具体的に何なのだろう。
わかったよ、と返しつつも内心では首を傾げたままだ。

「レギュラーコーヒーお願いします」
「了解」

コーヒーを入れる準備をする。その間、桜子ちゃんはずっとソワソワしていてせっかく旦那さんが来たのにどうしてだろうと思いつつ、手を動かす。


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