恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「お客さんいなくなったし、桜子ちゃんももう上がってもいいよ?旦那さんと一緒にお茶したらいいじゃん」
「そうですね、ありがとうございます」
「せっかくだからパンでも食べない?来月から新商品だそうと思ってて試作品あるんだよ」
「え!食べます!!」

途端に元気いっぱいにきらきらと目を輝かせる彼女にふっと軽く笑う。
桜子ちゃんは、他の同年代の女性と比べて明らかに食に対して貪欲だ。
最近ちょっと顔が丸くなったような気がしてそれを本人に伝えたらそれはそれは怒っていた。
といっても元々細かったんだから少しくらいふっくりした方がいいに決まっている。

「今テーブルに持っていくから。コーヒーは?レギュラーでいいの?」
「はい!ありがとうございます」

僕はすぐに事前に午前中に作っていたパンを用意する。
ハードタイプの生地にホワイトチョコを練り込んである。
二人分をお盆の上にのせてコーヒーと一緒に運ぶ。

桜子ちゃんと旦那さんは楽しそうにお喋りをしているようで、彼女が旦那さんに向ける目は”恋する少女”そのもので、こちらまで嬉しくなる。


< 262 / 282 >

この作品をシェア

pagetop