恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
「でも、夏希君とはライバル会社なんですよね」
「そうだよ」
「それって会社的に大丈夫なんですか」
「ん?」


お湯を沸かしている間に紅茶の茶葉が入っているキャニスター缶の蓋を開けるとものすごくいい香りがしてつい目を細めてしまった。
隣にいる朝宮さんにクスっと笑われて恥ずかしくなって蓋を閉じた。

「その、機密情報とか」
「ふふ、そんなことは大丈夫だよ。だって俺の会社だからね。夏希だってまだ規模は俺ほどじゃないけど最近勢いがあるからなぁ。俺に情報売るようなことはしないよ」
「最近流行りのアプリって夏希君の会社だったんですね」
「そうそう」
「遺伝子ってすごいですね~」
「そうかな?親の跡は継がない選択をしたから親には恨まれてるけどね」
「夏希君も?」
「そうだね。まぁでも自分の人生なんだから自分のしたいようにした方がいい」
「…」
「君のほうがわかってるか」

朝宮さんはそう言って丁寧に紅茶をいれた。
…所作っていうのかなぁ、もうすべてが綺麗なんだよなこの人。
夏希君も成人してからはじめて会ったけど育ちのいい家庭で育ったのだと一発でわかる。
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