恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
朝宮さんは驚いた様子で大丈夫?と私の顔を覗き込む。

「すみません、ちょっと体調が悪いみたいで」
「…」

納得のいかない表情を向けてくる朝宮さんの目を見ることが出来ない。
やってしまった…。
こんなんじゃ”やりまんです!”って言った嘘もバレちゃうしなんなら処女だってこともバレそう。

夏希君が立ち上がり

「桜子が具合悪そうだから帰るよ」

そう言った。
でも、彼は続けた。

「急な結婚報告、まだ苗字で相手を呼ぶ…しかも兄貴は特定の存在を嫌がる…それなのに結婚なんて」

―契約結婚だよね

「…」

大正解をまさかここで言われるとは思ってもいなくて私は顔を歪めたまま口をパクパクさせてなんて言い訳するか考えた。
でも、すぐに隣の朝宮さんが笑った。

「正解だよ、夏希」
「…」
「そう。お互いの利害が一致してこうなった」
「ふぅん。でも…もし、」
「ん?」
「もし―…桜子に好きなやつが出来たらどうすんの?離婚?」

考えてもいなかった言葉に私ははっとした。
契約書には…別にほかに恋愛をしても性行為をしてもいいっていうことが書いてあったような気がする。
ただ、そんなことは絶対にない。
だって私は男性が苦手だし多分そのせいで人を好きになることもないと思う。
だからあるとすれば…朝宮さんに好きな人だできるパターンだ。でもそれだってむしろウェルカム!
セックスしなくていいし、家事だけやっていたらいいってことでしょう?


朝宮さんは少し間を開けて

「それは自由だよ。誓約書には詮索はしないっていうこと、他に好きな人が出来てもいいっていうことも明記してあるし。ただ離婚は基本しないよ。桜子がどうしてもっていうなら考えてもいいけど」
「は、はい…」
そう言った。
「わかった」

夏希君はそういって玄関ホールへ向かって歩き出す。


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