恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】

「ええ、まぁそれはわかっていますけど…」
「そういう意味じゃなくて」
「…はい、」

千秋さんの口調が鋭くなって、”怒っている”のがわかる。
何故怒っているのかという大事な部分は全くわからないものの、彼の指が私の髪をすっと撫でて
神経があるわけないのに、そこに意識が集中してしまう。

「異性だってことちゃんと理解してよ」
「…」

私はこくり、頷いた。
理解しているつもりだった。でも、どうしても”契約結婚”という前提での共同生活だし、夏希君の告白だってそういう前提があるからこそ異性として接することが出来ない。
夏希君のお兄さんと契約とはいえ結婚している以上、告白だってデートの約束だって本当に困ってしまう。


「こんなはずじゃなかったのに」
「え？」
「知ってる？俺がなんでできるだけ早く仕事から帰ってきてるか」
「…わかりません」
「桜子に会いたいからだよ。こんなに一緒にいて楽しいと思える人に出会ったことがないんだ」