恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
千秋さんは、「じゃあ、やっぱり簡単だよ」といった。
何が簡単だというのだろうか。千秋さんのようにモテないし恋愛経験豊富なわけでもない。だからそんなことを言われても混乱するだけだ。



「え、待って…ち、千秋さん?」
「ん?」

急に私の左手にキスしたかと思うとわざと私の視線に入るように指を口に含んだ。
びっくりして変な声が出たのだが、指を舐められたことのなかった私は全身から湯気が出そうなほど恥ずかしくて仕方がない。

その様子を楽しそうに見る千秋さんはドSなのではと思った。

「…千秋、さん、あの…」
「嫌じゃない?」
「…」
「気持ちいい?」

何も言えなかった。肯定したら、認めてしまったらそれ以上をされることになるのをわかっていたから。

千秋さんは、嫌だったら言ってね、そう言ってつづけた。

彼の舌が、腕を這っていく。

「え、え、え…」
「ドキドキする?答えないならもっとするよ」
「…します!します!とっても…」
「そっか。じゃあ俺のこと、好きになるのも簡単だよ。だってさっき言ってたでしょ?」
「っ」
「あとは一緒にいたいって思ってくれたらいいな」



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