恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
ドキドキってそんなの誰にされてもするんじゃないか、そう思った。
あ、でも…。
私は男性が苦手だった。でも千秋さんの指なら手なら大丈夫だった。

それは、何故だろう。
そして、もう一つ疑問があった。


「でも、私。夏希君にも…あ、」

夏希君にも抱きしめられたときドキドキしてしまったことだ。
途中まで口にして、私はすぐにそれを噤んだ。彼の表情が歪んだのを見たからだ。


「夏希ね…夏希はさ、俺の可愛い弟なんだよ。小さい頃は体が弱くて友達があまりいなかったから家でゲームをして遊んでた。だからこの業界に入ったんだ」
「そうだったんですか」
「そうだよ。夏希は大切な弟。これからもそうだよ」
「はい」
「でも、だからこそわかってる?」

千秋さんの顔から笑みが消えた。
真剣な声、表情に思わず見入ってしまった。

「そんな弟が君のことが好きだって言ってそれでも…―」


―桜子を離さない意味、わかってる?


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