恋の駆け引きはいつだって刺激的【完結】
彼のそれが私の中へ入ろうとした瞬間、

「好きにっ…」
「桜子?」
「好きになってから…じゃ、ダメでしょうか」

私は叫び声に近いそれを彼にぶつけていた。
千秋さんでもいい、でも、千秋さんがいいって思ってからしたい。
ここまでしておいて直前でやめてほしいなんて我儘だとわかってはいるけれど、どうしても好きな人としたかった。

「…ダメ?」
「…ふふ、ごめんね」

千秋さんは降参したように小さく笑って私の髪に指をすっと通した。
私はごめんなさいと蚊の鳴くような声で呟いた。
嫌じゃなかった、なかったのに。

「急かしてごめん。怖かった?」

千秋さんが私の隣に体を寝かせて、私の肩を抱いて体を引き寄せる。
怖くなどないよ、大丈夫だった。でも、なぜだろう。

もっと彼を欲しいと思ってからしたいと思った。

”契約結婚”

普通じゃない関係だからこそ、なのかもしれない。

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