ストロベリー・ゲーム

そこでふと、祖父の言葉を思い出す。


『お前はひとりじゃあないから』


いつ、言われたんだったか。

最近は会っていなかったはずだ。連絡もまともに取っていなかった。入院してから最初だけだった。会いたくても恥ずかしくて会いに行けなかった。祖父も、会いに来てほしくなさそうだった。


......じゃあ、どうして俺はさっき、祖父に抱きしめられたんだろう? 記憶が蘇ってくるんだ。 俺の他にも二人、あの小屋の中に誰かがいたんだ。

馬鹿みたいなゲームをさせられていた。

言い争うこともあったけど、なんだかんだ、二人とも俺をちゃんと見て心配してくれていた。心地よかった。

だんだん、祖父の死を実感してきて、俺は壊れていった。

俺の中には、壊れた俺とそれを封じ込めようとする俺がいた。
それを悟られまいとしていたが、逆に二人には不審に、情緒不安定のように思われていたかもしれない。



そして扉が開いて目の前に、祖父がいたんだ。

晴れの日だった。
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