ストロベリー・ゲーム

「それは没収しようか」と男が言って、友達の手から喫煙の器具を取ろうとした。
友達が手に入れたタバコやライターは、親のものだった。親のものが無くなる、当然怒られるだろう。

他人事だとしても少し焦った俺は、思わず、男の肩を突き飛ばした。
男は尻もちをついた。衝撃で被っていた紺の帽子がとれて、黒髪短髪が露になる。爽やかで案外男前な顔が歪み、警察官の制服が土で汚れた。


......まずい。警察に手を出すなんて、らしくない。

やんちゃしていたとはいえ、常識の範囲内だった。校則を少し破るくらいか。さすがに警察を相手にしたことなんてなかったし、誰かの迷惑になることを好んでやるわけでもなかった。


「逃げよう」


誰かが言った。
途端にその場から逃げ出していた。

絶対にタダじゃ済まないという焦りでどうにかなりそうで、夢中で走って家を目指した。
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