ストロベリー・ゲーム
結局その時は警察から逃げることができたのだが、後日、俺の家の固定電話に、電話がかかってきたんだ。知らない電話番号で、俺を呼んでいると母が言って。
「もしもし」
母から受話器を受け取って耳元に近づけ、一言話すなり分かった。
〈もしもし? 桐江悟志さんですか?〉
――――あの声だ。警察官の声。
ゾッとした。背筋が凍るのが分かった。煙草のことが頭を過る。自分があの男を突き飛ばしたことも、逃げたことも。
「あ......」
心臓が早鐘を打つ。
罪悪感と焦りと恐怖が、ぐわっとこみ上げてくるのが分かる。絶望する。逃げた罰が当たったんだ、と思った。