ストロベリー・ゲーム
でも言っていることが支離滅裂なわけではなかった。心が痛む。私が言いたいことをちゃんと、ストレートに言ってくれるんだ、藍子は。
部屋の中に響く、一際目立つ藍子の怒声。
「考えるまでもなくない? やっぱり食べる必要がない人は決まってたんだよ」
藍子は立ち上がり、苺の入った瓶の方へずんずんと歩いていく。
そして瓶の蓋を開け、あろうことか、その中に入っている一つの苺を掴んで。
綺麗な指先に掴まれた果実は、光を受けた種の周りがべったりと艶にまみれている。鮮やかな赤の宝石のような。ただポスターカラーの絵の具を、逆さにした三角錐のまわりに固めただけのような。
『いいじゃんいいじゃん! 一つぐらい食べても誰も気づかないよ、食べちゃいなよ、怜美! 誰にも言わないから』
――――昔の記憶だ。