ストロベリー・ゲーム

畑に入って運動靴を土まみれにしながら、もぎ取った一粒の苺を私に向けて見せつけて、私が受け取るのを待っているんだ。あの時私は小学生だった。

貧乏だった。貧乏だったからお腹が空いていた。


温かい春の日だ。
学校の帰り道に山の方に遊びに行った。そこである家の畑を見つけた。その時の友達が――――そうだ、藍子だったんだ。藍子は水色のランドセルを下げていた。私は赤色だった。

藍子が先に畑に入っていったんだ。
「お腹が空いた」って私が言ったから。藍子は畑にできていた苺を食べようって言ってくれた。それが誰の家のものなのかなんて考えられなかった。


あの時は本当にお腹が空いて死にそうだった。
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