ストロベリー・ゲーム
だから。だから、だから。
......。
私の中の悪魔が囁いた。
甘い甘い苺はいかが?
そんな、遠慮しないで。
じゃないとあなたは死んでしまうよ。飢えて死んでしまう。
このままだと危ない。昨日はなにも食べていないだろう。
おひとつかじればあなたの勝ち。
おひとつ譲ればあなたの負け。
あの時は頭が狂っていたんだ。今思い返せば許されることじゃない。
私は他人の家の畑の苺を食べた。一粒だけじゃない。何個も食べた。藍子はそれを面白そうに道端で見ていた。
立派な盗みだった。藍子に言われたとはいえ、やったのは自分だった。
私の窃盗は事件として知れ渡った。