ストロベリー・ゲーム

確か誰かにバレたんだ。でも犯人の身元までは特定できなかった。私だとは知られなかった。

私は許されたわけじゃない。

でもあの時は食べなければ死ぬんじゃないかって怖かった。

でも許されない。

苦しいから忘れようと思った。

犯人は分からないという話を聞いた時、心底安心した。

罪悪感で押しつぶされそうだったから。

甘かったけど、美味しかったけど。

そんなに甘かっただろうか? 美味しかった?

目先のことしか考えてなかった、バカだ、私は。



あれ? でも、そこから藍子はどうなったんだっけ?
私はどうしたんだっけ?


現実に引き戻されるまでに間があった。





「あ」


目の前で藍子が苺を口に運んだ。
果実を含んだ口が膨らむ。ふわりと甘い香りが辺りに広がる。

途端に「お前」と隣で真広が叫んだ。
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