ストロベリー・ゲーム
藍子に向かって、だ。
次に「怜美早く食べて」と、苺を含んだ口で言いにくそうに藍子が叫び、残り一つの実が入った瓶を私の前に突き出した。辺りがスローモーションみたいに動いていた。
真広と私の間には距離があるから、私が受け取ってすぐに食べれば真広は食べられなくなる。
真広は藍子から瓶を取ろうとそちらに手を伸ばす。
もうなにが何だかもうよくわからなかった。
揺れた自分の髪の毛が視界を閉ざす。俯いて私が叫ぶ。
「ストップ」
二人の動きが止まった。
咀嚼の後苺を飲み込んだ藍子に、私はしっかり目を見て聞いた。
「藍子、食べた? どうして食べた? そんなに桐江くんに取られたくなかった?」
「え」
困惑したような藍子。
テンションがハイになっているんだ。いきなり閉じ込められてこんな馬鹿みたいなゲームをさせられて。気づかないうちにパニックになっていて、不安になっていて。