ストロベリー・ゲーム
私は過去のことを思い出した今だから冷静になれるんだ。
目先の事だけに囚われていちゃダメなんだ。
ドアの上部のすりガラスの奥は既に日が落ちていた。
もう夜か。ここに来たのは夕方ぐらいだったのかもしれない。
「私食べないよ。こういうのは卑怯って言うんだよ」
藍子を宥めるように言い、続ける。
「私、思い出した。藍子と一緒に学校から帰るときに盗んだの、畑の苺。だからもう盗みはやらない。卑怯な手も使わないから」
そしたら藍子の目がだんだん潤んできて、すぐにいっぱいになった涙が目の淵からこぼれ出した。私も藍子も息が荒くなっていた。