ストロベリー・ゲーム
少し沈黙があった。藍子が首を横に振り、涙声で言った。
「あたしもう手遅れなのにそんなこと言うの」
声が震えていた。
ああ、そうか、遅かったのか。
私まで悲しくなってきて、勝手に泣きそうになった。
「酷いよ。見捨てないでよ」
「......ごめん」
瓶を抱えて嗚咽する藍子を抱きしめた。長い横髪でどんな顔をしているかは真広にはバレていないはず。
涙がこぼれないように必死に目に力を入れる。
「桐江くんも一旦落ち着いてね」
「......ん」
振り向かないまま言い放った私に、真広は静かに返事をした。