闇に咲く華
鴻巣さんが、翔ちゃんたちを気絶させた後、軽く話をしてくれた。
澤田は本当に、清宮、川城、神子芝のところに組員を配置し、すぐに奇襲をかけられるようにしているとのこと。
澤田の更なる証拠をつかむため、父亡き今も潜入し続けていたこと。
"実は、莉依さんのトラウマを利用して、澤田とは関わらせず、自分で対処しようと思ってました。"
と暴露され、あの時の殺気やらはその為の行動だったのかと…、何故か納得してしまった。
説明し終えると、任務に戻りますと言い残し夜の闇に消えていった。
本当にシークレット組員だった…。
どういう気持ちで、続けてくれていたのだろう。
主を目の前で殺され、手も足も出せない歯がゆさ…。
計り知れないほどの思いがあっただろう。
だけど彼は、今も姫野のために動いてくれている。
私はそんな人のために、姫野の長として立ってもいいのだろうか…。
幼い頃、私が飛び出さなければ、父と母は死なずにすんだのに…。
私を恨んでいる人はいるはず…。
「はぁ。早くも根をあげてしまうのか、姫野莉依。」
考えれば考えるほど、負のループに襲われる。
あと6日で澤田とぶつかるというのに…。
そもそも、データのあり場所も見つかってない。
「頭が、壊れそう!」
いったい、何処に隠したんだ先代!
ひとり静かに暴れていると、扉からノック音が聞こえた。
「莉依…、少しいいか?」
「大和か。いいわよ、入って。」
大和は静かに入る。
そして、私をじっと見つめる。
「何よ。用があってきたんじゃないの?」
「お前の思ってること、当ててやろうか?」
顔をあげると、口角を上げて自信満々に言う大和の姿があった。
はい?
思ってること?
「たっく、一応?これでも?幼なじみだし?そりゃわかるわ。私は姫野の長として、立ってもいいのだろうか…。幼い頃、私が飛び出さなければ、父と母は死なずにすんだのに…。私を恨んでいる人はいるはず…。って思ってんだろ?」
う…。
何故に分かるんだこいつ。
昔から勘が鋭いから、隠し事も出来ない。
すぐバレてしまう。
図星をつかれて、声が上ずる。
我ながら恥ずかしい。
「だ…だから、何?」
抵抗のつもりで言うものの、あっさり返される。
「親っさんを慕うと同時に、皆は莉依を大切にしてくれてるんだ。恨むわけねぇだろ。むしろ、無事に居てくれてホッとしてるぞ。」
「…そんなの、口では何とでも言えるでしょ?」
心の底では、きっと…。
"人殺し"って思ってるんだよ。
「はぁ。言って分からねぇなら、見るしかないか。」
…ん?
見る?
何を?
私は疑問を持ちながらも、大人しく大和の後を付いていった。