闇に咲く華
連れてこられたのは、姫野の道場。
"地獄の稽古場"と呼ばれる所。
父が生前、この道場で皆を追い込みに追い込んでいたから、そう名付けられたそう。
でもどうしてここに?
「ここに来て何すんのよ。」
「いいから、この小窓から見てみろよ。」
大和が指差す先には、芳樹と陽介が、組員をしごいていた。
体が動くのかってくらいしごかれてるけど、それでも立ち上がって、二人に立ち向かっている。
「組員がさ、莉依が少しでも安心できるように毎日稽古つけてくれって頼んできてさ。日替わりで俺らがやってるんだよ。」
私が…?
安心できるように?
「誰ひとり、お前を否定するやつらは居なかった。むしろ、お前を守れるように強くなりてぇって。少しでも、不安にならねぇようにってさ。」
「私の…ために…。」
「不安がることなんかねぇんだよ。こんだけお前のことを受け止めてくれる奴等が沢山いるんだ。迷うことなく、親っさんの跡を継いでくれよ。」
皆お前のことを待っててくれてるんだ。
そう言った大和は、まっすぐ私を見て膝まづく。
「代々姫野を支えた分家の者として、必ず最後まで仕え、お守りいたします。」
その姿に、思わず笑ってしまった。
柄に合わないんだもん。
「大和のくせに、一丁前。」
それが俺だからな。と返す大和はつられて笑った。
「ありがとう。」
気にかけてくれて。
ありがとう…みんな。
私はみんなのためにかわってみせる。
必ず守ってみせるー…。