闇に咲く華
夜が明け、私は大和達を引き連れ大和のお父さんの所へ向かった。
組長代理として動いてくれていて、亡き父の後、なくてはならない存在だった。
「奏希叔父様、失礼します。」
スーツを綺麗に着こなす男は、姫野奏希。
大和の父親で、私の父の弟。
「お、莉依ちゃん、どうしたんだ?」
「私と、盃を交わしてください。」
急な私の言葉に驚きながらも、すぐ真剣な表情に戻る。
「…盃を交わすということは、もう元の生活には戻れないぞ?更に今以上に狙われやすくなる。女組長ってだけで珍しいからな。…それでもやるか?」
もう、迷わない。
元の生活って言っても、堅気じゃないし色々と修羅場はあった。
私は…、昔の自分を越えて、皆を守りたい。
「お願い致します。」
頭を下げて再びお願いする。
周りにいる人たちは、あわてふためく。
そんなとき、頭上から笑い声が漏れてきた。
「決めたら頑として考えを曲げない…。兄貴にそっくりだな。」
顔をあげると、奏希叔父様は優しい顔をして私を見ていた。
「3日後に総会がある。その準備もあるから、簡易的になるが…。まぁ、私も組の奴等も、莉依ちゃんをと強く願ってるもんでね。」
「叔父様…。」
「おい!酒ぇ持ってこい!」
奏希叔父様の優しく、力強い声が姫野に響く。
組員が慌てて酒を用意し、簡易的ではあるが、盃を交わす。
「既にお覚悟は十二分におありのことでしょうが、任侠の世界は、白でも黒と言われれば従い、胸中にすべてを飲み込んで承服せざるおえない厳しい世界です。様々なことにも耐え抜いて、一家のため、立派な長となる決意が固まりましたら、その盃を一気に飲み干し、懐中深くお納め下さい。」
奏希叔父様の言葉で一気に盃を飲み干す。
私の決意。
未成年なのに飲酒してしまったと思ったことはさておき、私は今から組長になる。
「それでは席替わりをお願いします。」
私は奏希叔父様が座っていた高砂に座る。
「ここに、新たな姫野組組長の誕生です。ここにいる者は皆、貴女を慕い、敬い、命をかけてお守りすることをお誓い致します。」