闇に咲く華













外が騒がしい。

静かにだが、急ぐような足音がこちらに近付いてくる。

大きなドアが開くと、そこには芳樹と新が立っていた。

「大和!清宮の若達が、姫ちゃん居らんか?って来てん。どうする?」

翔ちゃんたちが…。

「姫野に居るのではないか?とすごい剣幕です。陽介が止め役で居ますが…。」

ダメダメ。
意志が揺らぎそうになるのを取っ払うために、目を強く閉じて頭を振る。

両頬を叩いて、気合いを入れる。

大和を見据え、冷静な声で命じる。

「大和、私はここにはいない…、姫野でも探してる…、と伝えなさい。」

大和は苦虫を噛んだ顔をしていたが、すぐに表情を戻した。

「承知。」

大和はきっと、"本当にそれでいいのか?"と言いたかったのだろう。

私がここで会ってしまったら、気持ちが揺らいでしまう。
そしてきっと、弱さにつけこんで澤田も動くだろう。

翔ちゃんたちに危害を及ぼすのは嫌だ。

守るって決めたんだ。
生半可な気持ちでなんてやってない。

しっかりしろ。
私には沢山の命を背負ってるんだ。

現を抜かしている暇などないのよ…。

「組員全員に口裏を合わせるよう早急に伝えて。」

深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

組長になるということは、自分の感情を消して組のみんなのために考え動かなくてはならない。

それに今は、目の前の事に集中しなければ。

「好きでしたー…。」

私の言葉は、誰にも聞かれることなく静かに消えていったー…。







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