闇に咲く華
第5章 愛執染着の華
何かを忘れているー…。
大切な何かをー…。
「…い!莉…!…依…莉依!」
私を呼ぶ声に意識を戻す。
目を開けると、翔ちゃんと、龍也さんが居た。
「姫ちゃん、大丈夫か?」
翔ちゃんが私を抱き上げ、その横で龍也さんが声をかける。
でも、私は壊れた人形のように言葉を繰り返す…。
「鴻巣…澤田の仲間…私が殺した…。」
途切れ途切れに言った私の言葉に、2人が反応する。
「鴻巣!?どこでそれを!?」
翔ちゃんの問いかけにも耳を貸さず、ひたすら同じことを言う私。
私が壊した…。
「ここで、もしかしたら知ってしまったのかもしれない。」
龍也さんの言葉に翔ちゃんは眉を寄せる。
「若、こっちに清水の若頭が倒れてました。」
「こいつが…。清宮に連れていけ。拷問してでも吐かせるぞ。」
私を強く抱き締めながら、翔ちゃんは車に乗り、倉庫を後にする。
でもそんなことも気にならないくらい、私は堕ちていた…。
「両親を…殺した…。」
私は、壊れた人形のように言葉を繰り返す。
まるで、自分に言い聞かせるように…。
「や…だ…人…殺し…殺した…コロシタ…。」
「莉依、大丈夫だ。お前は悪くない。」
翔ちゃんは一生懸命私を宥める。
強く強く…。
私という存在が居なくならないように…。
それでも私は、涙を流しながら繰り返す。
私はー…。
両親だけでなくー…。
もうひと夫婦をも…。
コロシター…。