お姫様は恋してる?
一誠さんが管理人事務所で、予約なしで頼めるバーベキューセットを借りて来てくれたので、こちらはこちらで楽しむのだろうと下拵えを始めた。

ふと気がつくと一誠さんがいない。  

しばらく待っているとお前は忍者か?とアラフィフには思えない身のこなしで、岩から飛び降りて来た。

「何やってんの?」

「一叶たちの様子を見て来た。ちょうどこの岩の向こう側で純ちゃんのお兄さんと話していた。彼が今なんとかとの間に入ってくれているから大丈夫そうかな。」

「こっちのバーベキューの準備もちゃんとやってくれない?」

「とりあえず秀介に連絡したらな。」

「一誠さん、私はここまで来て料理を作るのが仕事かしら?」

一誠さんは、私の不機嫌なオーラに気づいたのか、慌てて火起こしを始めた。

結局、食べるのもそこそこに一叶の様子を何度も見に行く一誠さんには、焼いた野菜をたくさん皿に盛り、美味しい肉は、あらかた食べさせていただいた。

戻って来た一誠さんは、肉がほとんど無くて悲しそうだったけど、私はただ、お出かけの肉焼き要員にさせられたんだから、知らないっ。

放っておかれたら、私だってさみしいんだから。

< 106 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop