お姫様は恋してる?
耳元をかする息にアルコール臭を感じ、身体を縮こませた瞬間(とき)、身体にかかっていた重みがフッと軽くなり、振り返ると今泉さんが地面に転がっていた。

「しつこい男は嫌われるって、知らなかったか?これ以上、一叶に近づいたらただじゃおかないからな?」

地を這うような低い声の主を確認する前にすっぽり胸の中に抱きしめられていた。

ここにいないはずの人の嗅ぎ慣れたコロンの香りにものすごい安心感。

「しゅ…すけっ。」

優しく頭をポンポンされ、顔を上に向けるといつもの秀介の笑顔があった。

「お姫様、助けない方が良かった?」

「いじわるっ。」

秀介は、私の眦に浮かんだ涙を指で掬うとペロリと舐めて妖艶な笑みを浮かべた。

もうかっこよすぎです。

「一叶が、心配で帰って来たんだけど、そんなヤキモチ焼きのしつこい男は嫌いか。」

「秀介ならどんな秀介でも大歓迎だよ。」

「それは嬉しいな。」

蕩けるような笑顔の秀介の首に腕を回して、自分からキスをした。

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