お姫様は恋してる？

名前なんてなんでもいい 秀介

遡ること１日前。

俺は、本社を訪れて営業部長と調整をしたり、久しぶりの総務課メンバーと情報交換をしていた。

「川田支社長、社長がお呼びだそうです。」

「用があるなら、こっちに顔を出せばいいのに。」

周りには、俺の物言いに驚いている者も何人かいたが、俺の秘書時代を知っている課長は、「またか。」と言った顔をしていた。

これから柴原のところに寄って、一緒にランチに行こうかと考えていたのにタイミングが悪かった。

「川田です。」

社長室にノックして入るとニコニコ顔の社長が待っていた。

この人のニコニコ顔を見ると無性に腹が立つのは、やはり大丈夫と言いながら最後に困ると俺に泣きついてくる秘書時代の関係性のせいだろうか。

もっとも今は、一叶の祖父と言う一生逃れられない、いやこちらから逃げる気がない関係が出来てしまったから、付き合ってやるかくらいの心持ちになっただけ俺も丸くなったのか。

「川田、高階になる気はあるか。」

「はあ？」

いきなり言われて思わず変な声が出てしまった。