【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
だけど一切表情が変わらないので、伊織さんが何を考えているかは分からない。 顔も小動物のように可愛らしく、性格も愛らしい桃菜を前にすれば大抵の男は自然と頬が緩んでいく。
伊織さんの表情は余り変わらなかったけれど、いつだってモヤモヤしていた。
もしかしたら、伊織さんも桃菜の事を好きになってしまうかもしれない。 そもそも桃菜が可愛かったからこの同居生活にも応じてくれたのかもしれない。
そして桃菜は明らかに伊織さんを気に入っている。
もしかしたらいつもみたいに取られてしまうかもしれない。いやいやまさか、今回は結婚までしているのだ。
さすがの桃菜でも婚姻関係を結んだ男女に横恋慕をするほど野暮でもないだろう。 …と信じたいのだけど。
けれどそもそも私と伊織さんは愛し合って結婚したわけではない。 それを思うと気持ちがますますとズンと暗くなってしまう。
「そういえば真凛、次の日曜日は休みか?」
「日曜日は休み。ですけど……」
「うむ。そうか。じゃあ付き合って欲しい所があるんだが…」
「付き合って欲しい所ですか?全然いいですけど、一体どこに」
「まあ、行けば分かる。」